知的財産権保護の仕組み
「知的財産権」を構成する各種の権利は別名として「無体財産権」と呼ばれている。
不動産などの「有体財産」と対比すると、本来の性質上、「無体財産」は、物理的に見て侵害に対し全く無防備である。
例えば特許の対象であるアイデアなどは、せっかく莫大な時間と費用をかけて発明しても、それを見た他人は簡単に真似をすることができる。そのため、そのまま放置すれば、発明者は、発明を真似されることを恐れるあまり公表を差し控えることになってしまい、その結果、産業や文化の発達が阻害されることになりかねない。
そこで、諸国では、法律で、発明者などの権利者に対し、特許その他の知的財産権について排他的な利用が可能となるように一定の独占的保護を与え、他方で、その権利を第三者にライセンスして対価を得ることができるようにするという法制度を作って、発明などの公表を促進し、それによって産業や文化の発達を図ろうとしている。このような考え方を「インセンティブ論」という。このような意味で、知的財産権保護の法的な仕組みは、理論的には知的財産権の特質と密接に関連しており、極めて技巧的な法技術の上に成り立っている。
著作権についても、米国では同様の考え方に立っているが、ヨーロッパ大陸では、歴史的に、むしろ著作権は人間の精神活動の成果であるという見地から、天賦の人権つまり自然権として保護されるという考え方が有力であった。