「著作物性 - 著作権法による保護の客体」 岡村久道
1 はじめに
著作権侵害訴訟については、既に別稿(「著作権侵害訴訟の実務」弁理士会「パテント」誌1997年7月号所収)により概略的な考察を加えた。
その際、「著作物性」に関しては、紙面の関係上、別の機会に譲らざるを得ないと述べたが、本稿では、「著作物性」すなわち「著作権法による保護の対象」につき、改めて検討することにする。
2 著作権法2条1項1号
やはり前掲の別稿でも指摘したとおり、侵害されたとするものが「著作物」でなければ著作権侵害が成立する筈もないから、著作物性は重要な概念である。
何が著作権法による保護の客体である「著作物」であるのかについては、2条1項1号が規定している。
この規定を分析すると、「著作物」とは、@「思想又は感情」をA「創作的」にB「表現」したものであって、C「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」という4つの要件に分類することができる。
このうちCについては、さほど高度の芸術性や学術性等は要求されておらず、したがって、あまり大きな意味を持たないものと解されている。
そうすると、重要なのは@からBまでの要件である。
しかし、裁判実務上は、後述のとおりこれらの要件は必ずしも常に明確に区分して使用されているわけではない。