社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS

信学技報                              
TECHNICAL REPORT OF IEICE.
FACE99-1(1999-4)                

 

 

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スパムメールをめぐる米国及び日本における法的規制


岡 村 久 道

 

3 スパムベンダー側ISPが関係した法律紛争

 この問題にとって、ISPなどのサーバ管理者は、さまざまな立場で関連を持つことになる。

 第1は、自らスパマーに対しインターネットへの接続サービスを提供するという役割を担うものであり、第2は、他のサーバから発信されたスパムを受信して自社のユーザーに届けるという役割を担うものである。

 第1の立場をとるISPなどに対しては、米国では、反スパム派から、スパマーへの接続サービス提供中止を求める強い苦情、そして時として攻撃が寄せられることが少なくない。

 その例として、米国の大手ISPのひとつであるNetcom社に対し、反スパム派が、1998年2月20日までにNetcom社からスパムがUSENETに流されることに対し積極的な対策を講じなければ「ユーズネット死刑(UDP)」を適用すると宣言するという事件が発生している。

 さらに、反スパム派からの苦情などの結果、スパマーとの接続契約を破棄してスパマーとの間で契約不履行を理由とする法廷紛争になるというケースも出現している。

 たとえば、米国の基幹ISPのひとつであるAGIS社(Apex Global Information Services Inc.)と、スパムベンダーであるサイバー・プロモーションズ社(Cyber Promotions, Inc.)との間で裁判に発展したというケースが存在する。AGIS社は、サイバー・プロモーションズ社をはじめとするスパムベンダー数社との間で接続サービスを提供してきた。ところが、AGIS社は、反スパム派からping攻撃を受けたことが原因で不測の事態による業務上の障害を被ったとして、1997年9月19日ころ、前記接続サービスの提供を中止した。そこで、サイバー・プロモーションズ社は、AGIS社が両社間のサービス提供契約に違反したとして、フィラデルフィアの連邦地裁に対し救済を申し立てた。同月30日、裁判所は、サイバー・プロモーションズ社の業務内容からすれば、契約締結時点で、既に前記攻撃は予想可能であったから、反スパム派による包囲網の下でAGIS社は既に締結していた合意を変更することはできないとしてAGIS社の契約違反を認めた上、この契約には30日間の予告期間を経れば契約を終了できるとする条項が置かれているので、同社はこの条項を適用して契約を終了しなければならないとして、結局、新たなインターネット接続先を見つけるために同年10月16日までの期間に限定して、サイバー・プロモーションズ社への接続を暫定的に再開せよする命令を下している *3

 

 

   

 

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